月刊錦鯉97年9月号 連載・魚病ノートNo.19
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緋喰い


緋喰い
 緋喰いは、紅白、大正三色などの緋色の表皮に限って発生する腫瘍で、その他の色の部分には発生しない。角膜に赤色細胞を有する赤目の錦鯉では眼球にも発生する。主に2才以上に発生し、死に至ることはないが、観賞価値は低下する。
 原因は今のところ不明で、皮膚ガンか、色素細胞に関係のある腫瘍とされる。腫瘍患部は色が薄く、白っぽく退色する。大きさは米粒程度から、進行すると鱗数枚程度に拡大する。また、一般には緋盤が多少変色した程度のものも緋喰いと呼ばれ、厳密な定義はされていない。炎症や寄生虫による緋喰いに似た症状の皮膚疾患と間違えることもある。
 今のところウイルス説が濃厚であるが、遠因として、色揚げ飼料の過剰や、飼育水の水質の悪化などを挙げる向きもある。

症状
 緋喰いといわれるものの代表的な症状は次の通り。
  1. 周囲の緋色より多少薄い色味を帯び、表面にヌメリがなく、形状が平坦。

  2. 赤褐色ないしは薄茶色をして、やや凹凸がある。周囲より少し膨張し、縁が不規則。

  3. 暗褐色で、針の頭大ないし小指の頭大で、充実性の硬い隆起物がある。治療原因が不明であり、治療法も確立していないが、効果があったと報告されているものを列記する。

    1. 麻酔を施し、患部をメスで剥し取り、その後に抗菌剤を塗布する。剥し取る皮膚の厚さが薄いと病巣は再生し、深すぎると緋色細胞を喪失して著しく観賞価値を落とす結果になる。

    2. 副腎皮質ホルモンで好転したという報告がある。

    3. 口腔用ステロイド軟膏を3週間に4~5回の塗布で治療傾向を示したという報告がある。ただし、効果があったとされるのは比較的柔らかいタイプの緋喰いで、原因がウイルスの場合、及び細菌感染を併発している場合には、感染を助長させる可能性があり、本剤の使用は控えるべきとされている。この他、緋喰いの治療薬と称するものには、緋色の色素細胞ごと患部を消失させるものもあり、この場合は治癒しても患部の緋色は再生しない。 ・