月刊錦鯉97年9月号 連載・魚病ノートNo.20
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腸満


腸満(卵巣腫瘍)
 腸満は、産卵可能なメス鯉の卵巣に出来る腫瘍で、鯉の卵巣癌である。腫瘍が進行すると腹部が異常に膨張し、立鱗などの症状も現れ、死に至る。通常、明らかな体形異常になって気付く場合がほとんどで、手遅れのことが多い。
 発病の原因は不明であり、現在のところ、外科的な手術による以外に効果的な治療方法はない。しかし、手術に必要な知識と技術を持った「魚医」と呼べるような専門家が、ほとんど存在していないのが現状である。

症状
 病魚は腹部が異常に膨張し、膨満部は立鱗症状が現れることが多い。その他、背こけ症状、眼球突出、色彩の退色なども起きる。腹部の膨隆によって泳ぎが緩慢、傾斜姿勢となる。また、肛門に発赤、充血が現れる。以上のような症状がはっきりと現れてそれと気付いた時にはかなりの重症で、手術によっても治癒の望みはほとんどない。

 【早期発見】 人間の癌と同様に、早期発見ができれば、手術によって治癒の望みもある。日頃から錦鯉に触れることの多い業者であれば、早い段階で卵巣腫瘍を発見することが可能である。腹を触ってみて通常とは違う硬いシコリ、卵の片ばらみ、わずかな体型の狂いなどを感じた場合は、卵巣腫瘍の初期~中期である可能性がある。

手術
 外科的な手術によって卵巣を摘出し、治療が可能である。しかし、前述したように、手術には専門的な知識と技術が要求され、一般愛好者や錦鯉業者ではほとんど不可能と思われる。なお、本誌№102「卵巣腫瘍に光明」で、長谷川正昭獣医師による手術経過を詳報している。参照していただきたい。

原因
 卵巣腫瘍は、卵巣細胞にできた癌細胞の増殖によるが、細胞の癌化がどのようにして起こるか、そのメカニズムは解明されていない。しかし、稚魚期からのエサ、とくに酸化したり変質した飼料などを与え続けたことが遠因になっていると指摘する声もある。