月刊錦鯉97年8月号 連載・魚病ノートNo.17
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腸テロハネルス症


腸テロハネルス症
 粘液胞子虫類テロハネルスが腸管内に寄生して腸管に腫瘍を作る。この病気は二才以上の大型魚で発生する。
 腹部が肥大したようになる症状は他の病気でも見られるが、腸管に腫瘍を作るのは本病だけであり、病魚を解剖すれば確認できる。
 魚の調子が悪く、腹だけが大きくふくれて死んだときは、ハサミを入れて腹を開いてみる。原因は腹水症、卵巣腫瘍、テロハネルスのいずれかが考えられるが、腸内に腫瘍を作る病気は腸テロハネルス症の他にない。
 本病であれば、病魚の腸管の中には白い腫瘍状のものがあり、大きさは一般に直径数㎜から5㎜程度である。また、時には体長80㎝の鯉で、赤ちゃんの握りこぶしほどに達することがある。
 この腫瘍が腸管内の食物などの移動を妨げて、摂餌不良になり、痩せた状態になると考えられている。なお、錦鯉での本病の発病は、近年、ほとんど見られなくなってきたという。

《症状》
 外観上は、非常に痩せて腹だけが出てくる。摂餌低下、消化不良を招き、表皮が骨格にくっつくようにへばりついて、肉がまったくないように痩せ、貧血となり衰弱する。こうなると観賞価値がないばかりでなく、痩せ衰えて死にいたることもある。
 症状の軽い場合には腫瘍の先端部付近が破れて、やがて萎縮し、魚は回復すると考えられている。

《対策》
 発生原因となる胞子虫の駆除剤は、現在のところない。病魚は発見次第処分して、病魚の発生した池は消毒を徹底し、他魚への伝染を防止するようにしたい。予防法についても、現在のところ不明である。