月刊錦鯉97年7月号 連載・魚病ノートNo.16
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ガス病


酸素ガス病
 池水の溶存酸素量が200~300%以上(過飽和状態)になった場合に起きる。鰓を通して血液中に入り込んだ酸素が、血管内などで遊離し、気泡(酸素ガス)となる。
 飼育水が酸素過飽和になる原因は、池に多量のアオコやアオミドロなどが発生することにある。多量の植物プランクトンが高水温期に太陽光線が強くなるほど、光合成作用によって多量の酸素を水中に放出し、過飽和状態を生ずる。
 初夏から盛夏にかけて、特に強い陽射しが当たり続ける晴天日の午後から夕方にかけての発生が多い。

症状
 各鰭の血管に小さな泡粒状の気泡が生じ、眼の周囲、頭部にも気泡が発生する。しかし、窒素ガス病とは異なり、血管中に生じたガスの気泡が血管を詰まらせることはほとんどなく、このことによって死ぬことは稀である。
 ただし、稚仔魚では、腸内や腹腔内に発生した気泡の浮力で水面に浮き、疲労、あるいは魚体の一部の露出、乾燥が原因で死ぬこともある。

治療
  1. 軽症の場合は、溶存酸素50~90%の清水に移す。
  2. 魚の取り上げが不可能な場合は、曝気して余分な酸素を放出させ、注水をできるだけ多くする。
  3. アオコなどが原因の場合は、注水を多くして、肥料分とアオコを流出させて濃度を減らすとともに、水温を下げる。
  4. 水槽などで高水温の時は、氷塊を投入して、大急ぎで水温を下げる。予防アオコなどの発生の原因となる肥料分の除去、飼育水の曝気をする。曝気のしすぎが原因で酸素ガス病を起こすことはない。

窒素ガス病(気泡病)
 地下水の溶存窒素が120%以上(過飽和状態)になった場合に起きる。鰓を通して血液中に入り込んだ窒素が血管中などで遊離し、気泡(窒素ガス)となって、血管を詰まらせる。このため血行障害、組織の壊死が起きる。
 窒素ガス病は、愛好家の観賞池や小型の池で発生することが多く、稚魚、成魚の区別がなく発生する。
 過飽和窒素の水は地下水に多く、湧水や深い井戸の水ほど多くなる。また、ポンプで揚水したり、落差の大きいサイホンで水を引いてくる場合に、取水口で空気を吸っている状態の時にも過飽和窒素の水となる。水道水を使用している池での発生は少ない。

症状
 各鰭の血管に小さな泡粒状の気泡が生じ、眼の周囲、頭部にも気泡が発生する。眼球が突出する場合もあり、症状が進めば血行障害を起こし、キリキリ舞いの狂奔状態を呈して死亡する。軽症の場合には気泡が各鰭の血管などに生じないこともある。

治療
 軽症の場合は、安全な水に速やかに移す。魚の取り上げが不可能な場合は、曝気して余分な窒素ガスを放出させ、ガス濃度の低い清水をできるだけ多く注水する。