キロドネラ症
キロドネラ症は、秋から冬にかけての低水温期に発生しやすい病気である。古くはキロドンの名で知られている原生動物の繊毛虫類キロドネラ・シプリニ(Chilodone lla.cyprini)が原因で、主に体表や鰓、時おり鰭に寄生して起きる。
キロドネラは肉眼では見えないが、小判形、または馬蹄形をしていて扁平、背中はやや突出している。繊毛は腹面と囲口部にあって、これを動かし、ゆっくりと這うように、またはクルクルと回るように動く。体長が30~80μで40~100倍の顕微鏡で確認することができる。
キロドネラ属には熱帯性淡水魚の寄生虫として知られているものもあるが、こちらが20℃以上で繁殖するのに対して、錦鯉や金魚に寄生するキロドネラ・シプリニは低水温でしか繁殖しない。また、キロドネラは繁殖に不適な環境では自らシストを作り、その中で長時間生存し、繁殖の好機がくるのを待つことができる。
①過マンガン酸カリウム……基本的な用い方は、水温15℃以下の時は、1トン当たり2g、水温15℃以上の時は、水1トン当たり3gを溶解して薬浴、または散布。
②過マンガン酸カリウムの短時間薬浴……成魚で体力のある魚に限り、水1トン当たり5gで1時間の薬浴を、二日置いて三回以上繰り返す。時間厳守。鯉の様子を見ながら、鼻上げなどの異常が見られたら即座に中止する。
または、同様に体力のある成魚に限り、水1トン当たり200gで3分間の薬浴。時間厳守。鼻上げなどの異常が見られたら即座に中止し、清水に戻す。
過マンガン酸カリウムは、汚れた水の池では効力が半減し、鰓の組織を破壊する薬害があるので、薬浴に用いる水を清浄にしてから使用する。薬浴時間を超過すると、薬害、中毒症状を発生することがあるので、時間を厳守すること。池で用いる場合は、薬液の排出が容易で、新水の注水が十分にできる条件が必要。また、過マンガン酸カリウムは酸化剤のため、容器や池中の金属類は錆が生じやすく、手や衣服に付けば侵される。使用に際しては環境汚染に注意を払う。
③ホルマリン……水1トン当たり、20~30で最低三日間以上の薬浴。ただし、当才魚の場合は25を限度とする。薬浴中は注水を止めるので、酸素欠乏に注意する。
ホルマリン(ホルムアルデヒド35%溶液)は人間に対しても毒性が強く、発ガン性もあるとされるため、取り扱いは慎重に行いたい。また、植物やラン藻類、藻類を枯死させるため、水変わりを起こす危険性もある。揮発ガスを吸い込まないように気をつけることはもちろんのこと、薬浴水の処理や、薬剤を溶かした池水の排水にも注意を払わなければならない。薬浴に用いる場合は、使用量を誤ると体表や鰭に充血・出血を見ることがある。また食塩との併用は避けなければならない。
④2%食塩水……水1トン当たり食塩20㎏で10~20分間の薬浴。時間厳守。鯉の様子を見ながら行ない、異常が見られたら即座に中止する。