月刊錦鯉96年9月号 連載・魚病ノートNo.5
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ギロダクチルス症・ダクチロギルス症


 ギロダクチルス(Gyrodactylus)、ダクチロギルス(Dactylogyrus)は扁形動物の単生類に分類される外部寄生虫で、種類が多く、鯉や金魚からだけでも10種類以上が知られているという。いずれも鉤のある吸着盤で魚体に寄生し、粘膜や上皮細胞を食害する。

 大きさはギロダクチルスがやや小型で0.3~0.8㎜、ダクチロギルスが0.8~2㎜程で、ウジのような形をし、ヒルのように伸び縮み運動をする。肉眼での確認は困難だが、鰓の一部を取って40倍程度の顕微鏡で観察すれば確認できる。トリコジナ、イクチオボドなどの他の寄生虫と混合寄生していることが多い。

 ギロダクチルスとダクチロギルスは外見上もよく似ていて、ダクチロギルスが頭部に2対4個の眼点を持つこと、ギロダクチルスが胎性(親と同じ形をした仔虫として産み出される)で親虫の体内に子虫が見られることから判別できる。この子虫の中にさらにその子供が発生している場合があり、このことからギロダクチルスを三代虫と呼ぶ。ギロダクチルスは一匹の鯉の体表で次から次へと子を産んで増殖するため、鯉群の中の一尾だけに発生していることもある。

症状
 鯉への影響は多数寄生した場合のみだが、環境条件によって爆発的に蔓延を起こす。寄生は全年齢魚に年間を通して起き、特にギロダクチルスは秋から春の低水温時期に、ダクチロギルスは春から夏の高水温時に多く発生する。加温した越冬池でも水質悪化した時に発生し問題になる。
 ダクチロギルスは主に鰓に寄生することが多く、ギロダクチルスは鰓、体表、鰭に寄生する。病魚は食欲がなく、水面を浮遊するなど動作が綬慢となり静止しやすく、体表を異物に擦り付けるようになる。

【体表、鰭】
 大量に寄生した場合は皮膚が充血し、粘液の異常分泌により白濁、白雲症状が見られ、重症になると粘膜が膜状に剥離する。

【鰓】
 粘液の異常分泌とともに貧血を起こして、鰓が白色に変色し、鰓弁の先端が癒着して、鰓腐れ病の初期と似たような症状になる。体力の弱い魚の鰓では大量の粘液のかたまりが付着し、特に稚魚では粘液分泌のため鰓ぶたが開いて見える。重症魚は排水部に寄り、死亡率は高い。

治療 
 ギロダクチルス、ダクチロギルスの駆虫には、トリクロルホン(マゾテン、農薬のディプテレックス等の主成分)がよく効くが、トリコジナやイクチオボドと混合寄生している場合には、ホルマリン、過マンガン酸カリウム、食塩などが効果的である。また、症状の似ている細菌性の鰓病(カラムナリス菌による鰓腐れ)の場合には、オキソリン酸(パラザン)やフラン剤などの抗菌剤の使用が必要になるので、できれば顕微鏡で確認をしたほうがよい。
 重症魚では鰓の粘液分泌が著しく多いので、二~三日置いて反復薬浴しなければ効果がみられなかったり、再発することもある。

①トリクロルホン有効成分で0.5ml……水産用マゾテンの場合なら、水1トン当たり0.25~0.6gで最低3日間以上の薬浴。
 高水温、高ペーハー時は毒性が強くなるので使用しない。マゾテンはディプテレックスより魚毒性が低く安全であるが、使用量を誤るとギクなどの神経障害を魚に与えるので注意。

②ホルマリン……水1トン当たり20~25mlで最低3日間以上の薬浴。
 イクチオボドと混合寄生の場合は、水1トン当たり200~250mlで1時間薬浴。鯉の様子を見ながら行い、鼻上げなどの異常が見られたら中止する。
 ホルマリン(ホルムアルデヒド35%溶液)は、症状によっては薬害がある。池水量、薬量を正確に計ること。また、劇薬のため取り扱いに注意し、揮発ガスを吸い込まないようにする。食塩と同時に用いてはならない。

③過マンガン酸カリウム……水温の低いときは、水1トン当たり2gで薬浴、散布。水温の高いときは水1トン当たり3gで薬浴、散布。
 トリコジナと混合寄生の場合は、水1トン当たり3~5gで1時間の薬浴。
 過マンガン酸カリウムは、汚れた水では効力が半減し、鰓を破壊させる薬害がある。また、酸化剤のため、溶かす容器や池中の金属類はサビが生じやすい。池水に有機物や汚濁物があるときは、還元され、薬効が低下するので、池水を清浄にしてから使用する。1時間浴では鯉の様子を見ながら行い、鼻上げなどの異常が見られたら中止し、即座に清水に戻す。

④高濃度食塩水……水1トン当たり20㎏(2%)で10~20分間の薬浴。時間厳守。

⑤マリンサワー……水10リットル当たり50mlで20~30分薬浴。ギロダクチルス、ダクチロギルスの寄生を確認してから使用すること。水温20~25℃で使用し、鰓に異常が見られたら中止する。

予防
 定期的な予防として、水1トン当たり、マゾテン液―20を2.5ml(マゾテン粉末の場合は0.6g)。または水1トン当たり、ホルマリン20ml。いずれかの薬浴を月一回実施するが、マゾテンは水温30℃以上になると毒性が強くなるので中止する。
 また、新しい鯉を池に入れる前に、過マンガン酸カリウムを、水10リットル当たり2gの薬浴で5分間の消毒する。ただし、大きな鯉に限る。
 大きさはギロダクチルスがやや小型で0.3~0.8㎜、ダクチロギルスが0・8~2㎜程で、ウジのような形をし、ヒルのように伸び縮み運動をする。肉眼での確認は困難だが、鰓の一部を取って40倍程度の顕微鏡で観察すれば確認できる。トリコジナ、イクチオボドなどの他の寄生虫と混合寄生していることが多い。
 ギロダクチルスとダクチロギルスは外見上もよく似ていて、ダクチロギルスが頭部に2対4個の眼点を持つこと、ギロダクチルスが胎性(親と同じ形をした仔虫として産み出される)で親虫の体内に子虫が見られることから判別できる。この子虫の中にさらにその子供が発生している場合があり、このことからギロダクチルスを三代虫と呼ぶ。ギロダクチルスは一匹の鯉の体表で次から次へと子を産んで増殖するため、鯉群の中の一尾だけに発生していることもある。