月刊錦鯉97年2月号 連載・魚病ノートNo.10
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眠り病


 越冬中の当才魚、または二才魚の病気として、近年よく知られる眠り病は、その名のとおり、鯉が池底などに集まり、眠ったように横転する病気である。時には成魚にも発生し、池揚げ時や、土池から越冬池などに移動した直後に良く見られる。

【原因不明】
 原因は不明だが、急激な環境の変化や、運搬などによる魚の疲労、慢性的な栄養失調、水質の悪化などが誘因となって起きると考えられている。健康な魚にも感染することから、病原体による感染症の疑いが強い。
 新潟県内水面試験場では、推測としながら、秋の水温の低下や環境の変化に伴って、エロモナス菌のような細菌が体の中で増殖し、それによって”眠る“という症状が起きてくるのではないかとしている。
 
症状
 池底などに集まった魚が、しだいに眠ったように横転し、腹を見せて遊泳を停止、水中に浮遊する。一見、死亡したかのように見えるが、物音などには敏感に反応し、驚いたように逃げ出す行動をとるが、すぐ横転してしまう。
 病魚の外観はむくみ、眼球のくぼみを伴うこともあるが、前記したように浮腫症とは異なる原因によると考えられる。放っておけば死にいたることが多い。なお、寄生虫の大量寄生や、カラムナリス菌の感染でも類似の症状が見られる。
治療

①食塩を水1トン当たり5~6㎏で薬浴を7~10日間(水温は徐々に20~25℃に上げる)。

②、①と同時にテラマイシンを水1トン当たり50g、またはエルバージュを水1トン当たり10g混合し、7~10日間薬浴をする(水温は徐々に20~25℃に上げる)。
 抗菌剤の使用上の注意は、他の細菌感染症の項を参照のこと。


予防

 越冬と同時に水1トン当たり5~6㎏の食塩を池に入れ、一週間~二週間塩水浴を行い、その後、少しずつ水を差していって塩の濃度を下げていく。
 食塩水が治療や予防に効果がある理由は定かではないが、眠り病の病魚の血液中にはナトリウムイオンが欠乏しているとの報告もある。