月刊錦鯉96年5月号 連載・魚病ノートNo.1
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カラムナリス病(鰓腐れ病、鰭腐れ病、口腐れ病、皮膚のカラムナリス病)


右写真は鰭と体表に発症した病魚、この病気の典型的な写真(写真:新潟県内水試)

 滑走細菌類の一種であるフレキシバクター・カラムナリス(Flexibacter columnaris)が感染して発生する。各鰭、口吻、鰓弁の先端や体表に、細菌のコロニーである黄白色の付着物が出現し、鰓腐れ病(鰓病)、鰭腐れ病、口腐れ病、皮膚のカラムナリス病という病名で呼ばれる。外観症状は水かび病にも似るが、患部に菌糸が見られないことから識別できる。

【発生時期】
 水温14~15℃で発生し、20℃以上の高水温時に多い。主に春から秋にかけて発病するが、加温越冬では冬でも発生する。夏季の稚魚や当才魚では、急速に進行し、死亡率は高い。

鰓腐れ病
 鰓腐れ病は、泳いでいる姿だけで発見するのは困難で、注水口に寄っているとか、鰓蓋内に白いものが見えた場合に、鰓蓋を持ち上げて観察することが必要。何となく元気がない、底に沈んでいる、餌の食いが悪くなった、フラフラ泳ぐなど、多少おかしいと感じた時には鰓腐れ病と疑ってみる。
 初期には、鰓の先端や一部だけが白くなり、または鰓弁に黄白色の小さい付着物が出現し、粘液の異常分泌が起きる。次に鰓弁はうっ血し、暗赤色となり、小さい出血点が多く現れる。食欲低下、動作が緩慢になり、群れから離れるようになる。
 症状が進むと鰓が部分的に灰白色に変色し、中心が灰色や黄色になって腐り始め、または欠損してくる。呼吸回数が増加し、池表面を漂い、口と鰓蓋の開閉が多くなる。これを過ぎると、流れが穏やかで多少の流れがあるところや注水口に寄る。
 重症になると、池底に沈んだり、横転したり、時には狂奔して泳ぎ、壁にぶつかって死ぬこともある。欠損部には泥や水生菌が付着して汚い感じがし、鰓の組織は崩れて軟骨だけになってしまう。鰓の付け根が白く変色したり、鰓蓋を開いた時に鰓が白く見えるようになる。眼球のくぼみやむくみが起こり、ここまで進行すると、遊泳時にもそれとわかるが、手遅れになることが多い。
【検鏡】
 カラムナリス菌は細長い棒状の菌で、特有のコロニーを作るので顕微鏡(200倍以上)で確認できる。鰓の腐ったところの周辺部や黄白色の付着物をピンセットで少し取り、水を一滴落として広げる。200倍以上で観察すると、糸屑のような滑走運動をする菌がたくさん見え、ウニがトゲを動かすように一本一本が動く針の山のように見える。患部は病状が進行するにつれて水生菌などに置き換わるため、患部の周辺部を検査する。

口腐れ病
 口腔や口部周辺が赤または黄色の炎症を起こす。進行するとただれ、眼球のくぼみや腫れぼったくなり、口吻の先端から黄色、灰白色に変色し、患部組織はぼろぼろと崩壊しやすくなる。発病魚は食欲が衰え、注水口に寄ったり、物陰で静止、または水面を浮遊し、群れから離れていることが多い。摂餌ができないため衰弱、排水部に寄って死に至る。

鰭腐れ病
 各鰭が赤く充血し、先端部から徐々に白く変色し、溶けたようになり、簡単に発見できる。進行すると鰭膜が溶けて、鰭条部分だけが残り、箒状になる。伝染力が非常に強く、重症の場合は全身に感染し死亡する。初期のうちは遊泳の異常などは見られない。

皮膚のカラムナリス病
 体表に白色、淡黄色の付着物が付いたように見える。進行すると体表が白い粘膜で覆われ、脱鱗や粘膜の剥離が生じ、白いボロ布を着たようにぼろぼろになる。また、魚体はむくみ、体を擦り付けたり、ローリングしながら水面を漂うか、静止する異常遊泳が見られる。この場合は手遅れで死亡することが多い。最初から皮膚感染することもあるが、多くの場合は鰭腐れ病、鰓腐れ病、口腐れ病などが先行する。とくに幼魚に発生しやすく、眼球のくぼみを伴い、浮腫症のような症状になる。

治療
【薬浴】
 口腐れ病の病魚は摂餌できないので経口投与は不可能。薬浴が治療の中心となる。

【経口投与】
 餌を食べるようなら経口投与と薬浴を併用して治療する。経口投与は初日に多めに与えて血中濃度を急速に高め、2日目からは薬の量を減らし、5日間程度与える。

【乾乳用軟膏】
 口腐れ病、鰭腐れ病、皮膚のカラムナリス病の患部に塗布し、同時に薬浴を行う。

【治療上の注意】
 鰓腐れ病の病魚は呼吸困難になっているので、できるだけていねいに扱い、余分な運動をさせないように注意をする。

予防
 予防には、病原菌を観賞池や養殖池に持ち込まないことが必要。新しい鯉を池に入れる場合はエルバージュで薬浴も一方法。外傷は早く治療する。